「……北條君、今までありがとね。

ばいばい。

あと、悪い事言わないから、このまま死んじゃいなね。その方が楽だよ」


「……ぐ、倉本ォッ! ……裏切り者……人殺しッ……!」
 

目がかすんだ。どんどん視界が暗くなっていく。
 
それでも北條は呂律が回らなくなっていく口で、殺してやると叫び続けた。


倉本は、迷惑そうに耳を塞ぎながら、暴れる彼から一旦離れて、淡々と言った。


「この銃、形見に貰っとくね。

……あと、僕は君になんか殺されないよ。

悪いけど、僕は生き意地の汚い男だもん。

生き延びる為には、何だってしてやるよ……」
 

倉本は、もがく北條を眺めながら、まるで、相手が死にかけているのが分からないとでも言うように、軽いお喋りを続けた。
 



それが、彼の独り言になってからもなお、倉本は喋り続けた。
 


北條が完全に絶命して、痙攣もしなくなってから、倉本はやっと黙った。