「コーヒー……」
 
倉本の言葉に、北條ははっとした。

「……先手打っといて正解だったな」
 
北條は、指を口に突っ込み、胃の中にあるものを吐き出そうとした。
 
しかし、倉本が「あー、無駄無駄」と軽く言った。

「毒だもん、それ。助からないよ」

「……っお前、……最初から分かって……!」

「んーん? 半信半疑だった。

でもね、悪いけど僕も外道だからさあ……潔白かもしれない部下に、毒盛れるんね? 

でも、良かった。

君は僕を殺そうとした。

だから、僕も心おきなく君を殺せるよ……」
 

倉本は、北條から少し離れた場所にある、銃を拾った。

本物であることを確認して、安全装置をかけ直す。

「あ、ちなみにこの部屋の監視カメラ、

予め録画しといた当たり障りのない画像に差し替えてあるから。

助けなんて来ないよ」
 

倉本は、うつ伏せに倒れた北條の近くにしゃがみ込んだ。