「やっぱり」
 
倉本が口を開いた。



「やっぱり、正解だった。

僕が正しかったみたいだね。

……北條君、スパイだったん?」

「スパイなんて言い方しないで下さいよ……。

『俺』の方が正しいんです。この国を守ってるんですよ。

妙な事考えて反乱を起こすような連中からね……」


「まー嫌な言い方」
 
倉本は、おどけて口元を女々しく押さえた。


「それじゃあ、まるで僕が裏切り者みたいな言い方じゃん。

……まあ、いいけどね。

僕は僕のやり方で、この組織をぶっ潰すから……」


「そんな事、出来るわけが……」
 

そこまで言って、北條は銃を床に落とした。


息が苦しい。

先ほどからいやに流れていた汗は、緊張しているからではなかった事に、漸く気付く。

彼は、苦しそうに膝をついた。


反対に、それまで椅子に座っていた倉本が、立ち上がった。

落ちていた銃を、北條の手の届かない場所まで蹴飛ばす。