「倉本先輩、英語喋れるんですか?」

「喋れるよ。おもっくそカタカナ英語だけど」

「うわ……それで大丈夫なんですか?」

「しょうがないじゃん。学生時代に好きだった英語の先生が訛ってたんだから」

「訛ってるといえば、先輩もちょっと訛ってますよね。

関西じゃないみたいだけど……先輩ってどこ出身なんですか?」

「教えなーい。とりあえず北関東のどこかとは言っておこうかな。

僕は秘密の男だからね。

……あ、話戻すよ。

そんでその英語の先生が山形出身だったから……いや別に山形に恨みは無いんだけど……

その先生ね、めちゃくちゃ訛ってたん。

で、声がでかかった。

インパクトも絶大だった。

しかも先生の英語は語気が強くて発音が尻上がりだから、

普通の自己紹介文とかでもいちいち『アイアムア、メアリィ!?』な感じ」 

北條は辟易しながら尋ねた。

「よくその人、それで教授が務まりましたね」

 
倉本はあはははっと笑ってから、「ん?」と気付き、


「教授? 君、何言ってるん?」


「だってそれ大学の話ですよね? え、まさか高校の……?」

「悪いけど中学だよ。だって僕、高校も大学も行ってないもん」
 
北條は言葉を失ったが、倉本はいいよいいよと手をひらひらさせた。