倉本は椅子に座りながら、自分もコーヒーを口に含んだ。
「どんなソフトも使えない上、組み立て直した傍からまた崩壊してくなんてルール違反でしょこれ……
しかも、そういう起爆装置的なの全部起動させて、いちいちもう作動しないように作り直さないと進まないとかね……終わらない地獄だよね」
「ちょっと倉本さんが何言ってるのかよく分かんないんですけど、意味は何となく分かります」
「何が『分かります』だコノヤロッ。
君、全然作業進めてないくせにー」
「だから、この時点で既に難し過ぎるんですってば。
俺ごときには無理ですよ」
北條が泣き言を言いながら、飲み干した紙コップを机の端に置いた。
倉本が語り始めた。
「……正直僕も、この仕事貰った時はさぁ、めちゃくちゃよくわかんなかったんだよね。
だって……ある日突然現れたサングラスに黒スーツの怪しい人達に、
『協力してくれるか』って訊かれて、
何となく『はい』って答えちゃったが最後、
自宅から拉致同然でこの研究所に連れて来られてさあ?
でもまあ、報酬は弾んでくれるって言ってたし、
プログラムの復旧とか何とかって聞いてたから、
どんなに早くても三日くらいで帰れると思ってたのに、あっという間に三年くらい経ってるし……」