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執行所内にある研究所の、たくさんの機器とコードが渦巻く一室にて。
 
ディスプレイに向かってキーを打ちながら、睨めっこしている男に、

太いおさげ髪の男が紙コップを差し出した。

「うい、コーヒー」

「倉本先輩ですか……いきなり背後に立たないで下さいよ。

びっくりするなあ、もう……」

「何さー、北條君の恩知らず。

人がせっかく後輩に親切してやったというのに」
 
おさげ髪の男――倉本が、唇を尖らせた。
 
ディスプレイに向かっていた男――北條は、苦笑いしながら謝り、コーヒーを受け取って口を付けた。

「あ、先輩ひどい、これブラック……しかもめちゃくちゃ濃い……?」

「んーごめん。砂糖一本じゃ足りなかった? まあいいや我慢してよ。

それよりさー、北條君。あれから作業進んだん?」

「さっぱりですよ……。

昨日、倉本先輩がちょっと解析してくれた分から、一向に……」


「『ちょっと』は余計じゃん……ていうか、このプログラムがあり得ないんだってば」