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―――病室。
白く明るい、死の漂うその場所で。
彼女は、傍らに横たわる老人に話しかけた。
「………あのね、おじいちゃん。
私この前ね、プロポーズされたの……」
老人は沈黙している。
ただ、無機質な電子音が、同じテンポで鳴り続けた。
画面に表示されたギザギザは、様々なチューブで繋がれた老人が、まだ辛うじて生きている証だ。
まだ生きている、よりも。
まだ死んでいない、が正しくても。
彼女は構わず話しかけ続けた。
両親をなくした彼女にとって、老人が最後の肉親だった。
「おじいちゃん、私、この話受けるね……。
その人は、おじいちゃんの事も面倒見てくれるって。
だから、いいんだよね……これが、正しいんだよね、きっと……」