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確かあれは夏で、公開演習に向かう途中の廊下だった。
 
初めて晴喜に出会った時、彼女は光に冷めた声で一言、

「バーコードみたい」と言った。

侮蔑と言うより、単なる感想として。

けれども結構、無遠慮に。


「どこがだよ。俺ハゲてねーし」
 
光が喰ってかかると、

「腕」
 
晴喜は言った。

「ズタズタね」
 
半袖のTシャツから覗くその傷は、隠されもせずに腕中を走り回っていた。

「るせーよ」

「自分でやったの?」

「お前には関係ないよ」
 
苛立つままに彼女に蹴りを入れかけたのを、隣にいた人物に止められた。

「やめろよ、女の子だろ」
 
誰かと思って見たら、耕平だった。

すらりと背が高く、髪の長い男。

その頃、光が唯一友達と呼べる人間だった。