だがいい加減呆れてきたので、一樹は思い切って尋ねた。

「おい樋口……藤原は?」
 
途端に樋口は真顔になり、「ああ」と返事をした。

「家族には連絡をして……

今は、霊安室で対面しているところだ」

「そうか」
 
今まで、デスクワークしかしていなかったのに、

突然戦場へ放り出された可哀想な男。

彼は空っぽで汚れ切った自分達とは違い、

限りなく善良な市民であったはずだ。


 
……こんな事って、あって良いのだろうか。




「一応、今回のこれは殉職、って形になる」