一樹は、執行所のエントランスを抜けて、

とぼとぼと歩き始めた。


仕事の後は、極端に口を利きたくなくなる。

それが強い時には、

誰かと一緒にいる事でさえも苦痛だった。


それを知っている樋口は既に帰ってしまっているのか、

いつも姿を見せない。


執行所からマンションまで、

歩いて帰れない距離ではない。


一樹は、同じような建物が立ち並ぶカラフルなビルの塊の前を、

次々と通り過ぎて、人とぶつからないように配慮しながら、

目線を下に落として歩く。