「お母さん、何処行くの?」


私はランドセルを下ろしてお母さんの後ろにたった。


「卓也が今日学校で喧嘩したのよ。」


卓也は2個上のお兄ちゃん。


私と違って親のいう事も聞かないし、学校ろくに行かないし…


お母さんも卓也に気を使っている。


私よりも卓也ばかり見ていて…


お父さんもお母さんと最近喧嘩ばかりで。


今、家族はばらばらで。


「ご飯、適当に食べでね。」


そう言い残してお母さんは家を飛び出した。


もうすぐ夕日が沈む。


私はベランダに出て海に沈む夕日を眺めた。


「悲しくなんか無いよ…」


そう。悲しくなんかない。


口にしても、心の中つぶやいてもやっぱり涙は出てくる。


「本当は悲しいんだよ。もっと仲いい家族になりたい。」


大粒の涙が頬を伝った。


「うう…う…」


しゃがみこみひそかに泣いた。