その一言で、男の人……
ううん、白衣を着てる
この人は医者だ……
その人は、逸らしていた目をこっちに向けて
「君には申し訳ないと本当に思う………すまん……」
頭を下げた
「嫌………止めて………」
自分が何をされようとしてるのか分かった時
全身に恐怖が走った
赤ちゃん……
私と桜汰君、銀星の赤ちゃん…
「これから麻酔をかけます…」
「いや、イヤよ!!!」
身体を動かして逃げようとする
だけど、さっき臭いをかがされた薬が身体から抜けてないのか
力が入らない
「大丈夫………一瞬だから…」
麻酔の点滴の準備が出来て
先生がこっちを向いた
「お願い!!止めて!!」
涙を流して懇願する私に
先生の手が一瞬だけ止まる
その顔は、辛そうに見えた
「本当はこんな事したくないんですよね!!だったらお願い……
大切な命なの、、殺さないで!!!」
「私は…………」
先生が麻酔の針を下ろそうとした時………
−バン!!!
「早くしなさい!!」
中の騒ぎを気にして、愛俚沙さんが病室のドアをいきなり開けた
「愛俚沙さん………」
「早くして!!早くしちゃってよ!!」
興奮したまままくし立てる彼女に
「こんなこと止めて!?」
声を張り上げた
「うるさい!?子供なんて絶対許さない………医者が出来ないなら………私がしてやる……」
「副社長!!」
取り乱したまま、先生の手から麻酔の針を奪い
「イヤ…………」
私の手をグッと掴んで
「煩い!!!あんたのお腹のそいつさえ居なきゃ、私と桜汰は昔に戻れるの!!」
「桜汰君!?助けて!!!」
針を腕に突き立てようと腕を振り上げた