まずは優雅に、優美に、まるで高級娼婦であるかのように装ったメアリ嬢が舞台に姿を現した。

 薄い布地の安物ドレスであろう。上半身の仕立ては彼女の体のラインを浮き彫りにするようなもの。

 しかしスカートはと言えば薄い布地を幾重にも織り込んだ贅沢(そう見える、というだけだが)なものだった。

 舞台上で少女は震えるように一礼を――そうだ、舞台とはいってもこの劇場はウェストエンドのそれのようなものではない。

 円形舞台を中心に配し、その周囲に一段高い客席を用意したものであり、ねずみ嬲りの舞台そのものである。

 その中心で周囲に礼を済ませた少女は、周囲の檻の開く音を聴いて身をすくませた。

 当然のように、檻から放たれたのは三匹の犬だった。黒毛で細身のそれらは、飢えた狼のように少女の周囲をまわりながら包囲を狭めていく。

 観客がやれ逃げろだの、やれ脱げだの下品にはやしたて(私ももちろん観客ではあったが、叫ぶようなはしたない真似はしなかった)、少女はどうしていいのかわからないままに右往左往する。