舐めてやがる。

 あぁ、君ももう知っているだろう?

 馬鹿な新聞のせいでひどい大事になっちまった。

 倫敦で起きた事件だ。

 ブン屋どもの口を塞ぐのは出来ないことだってわかっちゃいるがな。

 しかし、あの手紙もあの落書きも、何もかもが作り物めいてやがる。

 ユダヤ? 娼婦? 一体どうなってやがるんだ、この事件は。

 君もしばらくこちらへ来ないほうがいい。

 巴里はここより、少しは安全だろう。

 これでヤードは、ホワイトチャペル連続殺人の続きって線は消して新たな連続殺人として捜査を続けるらしい。

 新聞を見て投書は増えるだろうが、その中の何通が本物なんだろうな。

 言っても仕方ないことか。

     一八八八年 九月二十五日 ジョージ・サンダーソンの手紙より抜粋