「何で?」

「浴衣、崩れちゃう……」

「ちょっとだけ」


抱かれた腰がさらに引き寄せられ、そっと唇が重なった。


……何かすごく、ドキドキする。


思わずシャツの端をぎゅっと握った。

触れるだけのキスなのに、いつも以上にドキドキしていた。


「もっと……って所だけど」

離れた唇が触れそうな距離で囁く。


「ダメ、だってば……」

「真央、かわいい」


耳元でそっと囁かれて、思わず顔が赤くなる。


「脱がしたいなぁ」

「ちょっ……!?」

「冗談だって。俺、着せられないし」


笑いながら、啄ばむようなキスを繰り返す。


「他のやつに見せたくないな」


飽きることなくキスを繰り返していたら、テーブルの上に置いていた携帯が震えた。


お互いびっくりして動きが止まり、顔を見合わせた。


すぐに止まったそれは、メールの受信を表していた。


[今どこにいるの? 早く帰って来て!]

遥からの帰れメール。


「休憩、終わりみたい」

「……頑張って来いよ」


別れ際にもう一度キスを交わし、私は手を振って準備室を出た。


トイレに寄って着崩れてないかチェックするために鏡を見たら、グロスが取れていた。


しょうがないか、あれだけ……すれば。


でもメイク道具はないから、着崩れだけを直してトイレを出た。



「真央ちゃん遅い!」

「ごめーん」