「マジメに言ってんのに……」

こんなこと聞いてる自分が嫌で、涙が浮かんでくる。


「ごめんごめん。でも、受け取ってないよ」

「え……」


「他の女からのプレゼントなんていらない。真央からだけでいい。
真央しか──欲しくない」


そう言って、うっすら涙の溜まった目尻にキスをした。


「……っ」


それから、そっと私を抱き寄せて、耳元で囁いた。


「今日だけ、俺の言うこと、何でも聞いて?」

「何でも?」


……それ、何言われるかわかんないから、ちょっと怖いかも。


「そ、何でも」

私とは反対に、圭吾の声は弾んでいるように聞こえた。


「……ん、いいよ」

今日は圭吾の誕生日だしね。


「じゃ……とりあえずケーキ、出して?」

「え? あ、うん」


何言われるか、ちょっとドキドキしてたのに……。


圭吾から離れて、キッチンにケーキを取りに行った。

おいしく出来てればいいんだけどな。




「お待たせ。……何見てんの?」

「ん? 大事にしてくれてんだなーと思ってさ」


圭吾の視線の先には、鏡の前に置かれたあの“うさぎ”。


「……うん。毎日見てるよ」