「ねぇ……」

「ん?」


ネクタイを眺めていた圭吾がこっちを向いた。


「……ううん、何でもない」


「……真央」

その声が“何でもないことないだろ”って言ってる気がして。


「ケーキも作ってみたんだよ。甘さ控えめにしたから。今持って来るね」

視線を逸らして立ち上がったんだけど──……。


「真央」


その声で私はまた、元の場所に座り込んだ。


「何?」

「……何でも、ないよ」

「嘘。言いたいことあるならちゃんと言え」


「…………」


「俺には嘘つくな。我慢するな。無理するな」


私、こんな嫉妬深かったのかな?


プレゼントもらうくらい、いいじゃん。


圭吾はこうやって私の傍にいてくれるんだから。



「真央」

もう一度、今度は優しい声で私を呼ぶ。


「……プレゼント」

「ん?」


そう言われて、圭吾は私が今あげたばかりのネクタイの包みに目をやった。


「違う。さっき……女の子からプレゼント、渡されてたでしょ」

「さっき?」

「放課後、階段で……」

「……あぁ」


そこまで言って、やっと圭吾は思い出したみたいだった。


「……ヤキモチ?」