「仕方ねぇから奢ってやるよ」


会計は個室でやるみたいで、隼人先輩は皿を下げるなりカッコよくもない笑みを作る。


結局あたしは少しも食べられなくて、忍が処理してくれた。


細身なのに意外に大食いなギャップに、キュン。


「んじゃ帰るんで」

「お礼を言おうかぁぁぁあ!?」


暑苦しい人ね、なんて思ったのは最初だけで、隼人先輩は何だかんだ後輩を大事にする人なんだなと分かった。


忍もきっと、隼人先輩を好いてると思うもの。


「ウザくね? 何か前よりウザさ増してね?」

「お前の方がウゼェよ!」


……多分。


じゃれてるようにも見えるふたりを眺めていると、横に人の気配。


見上げると、いつ入ってきたのか頬が少し赤くなってるちぃ君だった。


……ちょっと、気になってたのよね。


「ねえ、ちぃ君? アナタその頬どうしたの?」

「これ? ……野良猫パンチ食らったんだぁ」


ニコッと笑うちぃ君からそれ以上聞くなと言いたげな圧力を感じて、「ふぅん」と返す。


きっと女に殴られたのね。とんでもないイケメンだけど、性格悪そうだもの。


「苺ちゃん?だっけ」

「そうよ?」


背の高いちぃ君を見上げると、なぜかニヤリと悪戯に口の端を上げられた。


何!? 可愛い名前だから食べたいって!? ダメよそんなの! あたしは忍に食べられたいもの!!