「苺?」
すでにフォークがパスタに向かっていた忍に呼ばれて視線を合わせると、あたしの口元には黄金に輝くパスタ。
「食わねぇの?」
ガチン!と音が出るほど勢い良く食い付くと、忍は眼を丸くしてまばたきをした。
あたしは急速に恥ずかしくなって、赤くなりながらフォークから遠ざかる。
俯きながら、口に広がるチーズの香りに酔いそうになった。
ああ、あたしのバカ。本能のままに食いついちゃって、こんなはしたないことシンデレラはやらないわ!
だって急に静かだもの! 個室息苦しい!
耐えられなくなって目だけ上に向けると、バッチリ忍があたしを見ていた。
最悪、なんて思うより先に、胸がギュウッと締め付けられる。
忍が、奥二重の瞳を細めて微笑んでいたから。
「……」
一瞬だけ。ほんとに一瞬だけ。
まばたきをしたら忍はもうパスタを食べていて、あたしは行き場のないトキメキに顔を熱くするばかりで。
「~~っ」
両手で赤くなる顔を、隠すしか出来なかった。