「用無いなら切りますけど」
『いやいやいや!! 悪かったって!! ちょっとお前今ヒマ!?』
「声がデカい」
そう言った忍に反省したのか、声はもう聞こえなかった。
「――苺、暇?」
「はぁ」とか「へぇ」としか言ってなかった忍が携帯を閉じてから発した第一声。
「忍が生きてるだけであたし毎日忙しいわよ!」
「あっそう。なんか飯食いに来いってよ」
1秒もしない内に話題を流されたことへ反応するより先に、妄想が始まってしまった。
……苺、暇?って聞いたあとに、飯食いに……?
『それって……』
『……言わせないでくれ。デートの誘いに決まってるじゃないか』
『そんな……王子様とご飯なんて……』
『嫌かな?』
「喜んでーーーー!!!!!」
「俺パスタより米がいい」
デート! 放課後デート! いつも駅までしか一緒に帰れなかったけど、今日は違う!
放課後の忍の時間ゲット……!
チラリと忍を盗み見ると、「何食うべ」とかなんとか。いやそこは苺を食べるんじゃない? なーんてっっきゃーーー!!!!
「ふふ……うふふ」
「お前の顔不気味」
聞こえない聞こえない。