「そんなとこが好き……」

「腹減らね?」

完璧なまでにスルー!!


繋ぐわけじゃない手はすぐ離れてしまうけど、歩く歩幅を合わせてくれるようになった忍は、もっと好き。



5月初旬の爽やかな風を受けながら昇降口を出ると、忍の携帯が鳴った。


ポケットから携帯を取り出す忍は、背面ディスプレイを見て「はん?」と眉を寄せる。


気になって覗くと、知らない名前の人から電話がきたようだった。


バカ2号……って、誰?


「はい?」


立ち止まって電話に出る忍。誰なんだろうと思ってると、あたしにまで聞こえるほどの大声。


『もしもしぃ~っ!?』

『人の携帯で何やってんだこの変態ぃぃぃぃい!!!』


バッと勢い良く携帯を耳から離す忍は、怪訝な顔をして携帯を見つめていた。もちろんあたしも。


『なによぉ! いいじゃない!』

『仕事しろバカ店長が!!! 携帯返せっ!』

『イッターい! うわ~んっ隼人が苛めるぅぅぅう~!!!』

『っ! ……ちょっとふたりとも喧嘩しないで下さいよ~……コロスゾ』


な……何……? ていうか女の人の声がしたわよ!?


『あー。もしもーし。忍?』

「……いきなり何すか」

『ワリーワリー。ちょっと変態が……ケツを握るなぁぁぁぁあ!!!!』


キーンと耳に響く大声に忍は心底迷惑そうな顔をして、あたしに歩くぞと目で訴えてくる。


誰? ねぇ誰?