「……横向きになれとは言ってねぇ」
「忍、左利きなのね」
フフッと笑うと、忍は眼鏡のズレを直しながらあたしを見て、諦めたように資料に視線を落とした。
「黙ってろよ」
「うん」
左手にペンを持ちながら頬杖をつく忍を、僅か数センチ離れた距離で見てるなんて、あたしってば何て贅沢。
邪魔にならないように出来るだけ右に寄って、横向きに座ってみたけど……やっぱりくっつきたい。
ポスッと上半身を忍の体に預けると、規則的な忍の鼓動が聞こえた。
「赤ん坊みてぇ」
なあに、そのバカにしたような微笑み。シンデレラが王子様に甘えて何が悪いのよ。
「ねぇ忍。何型?」
「……A型」
「好きな食べ物は?」
「肉と米」
「好きな色は?」
「深い緑」
ねぇ、忍。
「誕生日は?」
「1月11日」
やっぱりあたし、忍が好きよ。