「とにかく座れ。黙れ。ここにいたいなら邪魔すんな」
漆塗りの立派な机にバサッと資料を広げる忍。その瞳にあたしを映す暇はないらしい。
「……分かった」
シュンと肩を落として、机と忍の間にある僅かな隙間に足を割り込ませる。
「静かにしてるわ」
「いやいやいや、待て待て。おかしくね? 何で座れって言われて俺の膝に座んだよ」
「何言ってるのよ。座れって言ったの忍じゃない」
背後から聞こえる忍の声にドキドキしながら、視線は目の前に広がる資料。
部活動予算案、各委員会活動報告書。ふぅん……小難しくてよく分からないわ。
「……お前アレだろ。アホだろ」
「忍はツンデレよね?」
「もうお前黙ってろ」
忍が話掛けてくるんじゃない!
振り向いて文句を言おうとした時、ギシッと椅子の軋む音がして、両側から忍の腕が伸びてきた。
「もっと右寄れ」
限りなく耳元近くで言われ、ドキリと心臓が跳ねる。
「資料が見えねぇ」
ベシッ!と左側頭部を叩かれ、あたしはおずおずと右に寄る。