「どっちを、選ぶかな」


ドキンと、心臓が跳ねる。その言葉に、淡い期待が崩れ去っていく。それでもまた、積み上げる。


透ちゃんを選んでも、いい。


見つめていた忍がギャラリーを見回して、不機嫌な顔をしてこちらに向かってきた。


……伝える前に湊磨くんが来たから言えなかったけど、あたしは利用されたっていいのよ、忍。


利用されても、それだけじゃ終わらせないから。そうすればいいと、分かったから。


どれだけ忍が透ちゃんを好きでも、いつまでも想いが消えなくても、頑張ると決めたの。



「ちょっと来い、透」


忍はあたしの目の前まで来て、後ろにいる透ちゃんを呼んだ。あたしを、一度も見ることなく。


「はひ!? 何であたし!?」

「知るか。文句は奈々と湊磨に言えアホ」


……頑張ると決めた。
振り向かせると、誓ったのよ。


「えぇ~……何て書いてあったの?」

「トール、いってきなよ」


昴先輩が言うと、不思議がっていた透ちゃんは「はい!」と答え、奈々先輩と湊磨くんのもとへ戻る忍に付いて行った。


あたしはのんと燈磨の視線に気づいていたけど、見返すことはなかった。


声をかけられたら、何て答えようと思っていたのに、声をかけてきたのはのんでも燈磨でもなかった。