『今から会長が借りてくるものは! しっ!』
ゴッ!!とあり得ない音がスピーカーから響いて、湊磨くんは地面に倒れた。
「……イタイィィ」
「ぎゃー! 湊磨ぁああ!!」
「兄貴ダセェ……」
昴先輩は眉を寄せて、透ちゃんは叫ぶ。あたしはポカンとして、「寝てろドアホが!」と怒る忍を見つめていた。
「ははっ! 湊磨、マイクの痕顔に付いてるんちゃう!?」
「今のは痛そうだねぇ~」
そりゃ痛いわ。借りてくるものを言おうとした湊磨くんは、忍に思い切りマイクごと顔を叩かれたからね。
前歯、折れてるんじゃないかしら。折れてればいいけど。
「……し、って、何だろうね」
不意に隣に立つのんが口を開く。あたしはのんを見上げてから、再び忍に視線を移した。
……し? 確かに湊磨くんは“し”と言ったけど、学校で借りれるものに“し”がつくものなんてあるかしら?
し、し…し~……職員室? 無理でしょ。し、し、昇降口? いやだから無理でしょ。忍どんだけ怪力。
「分からないわ」
「あるじゃん。し、が付くやつ」
ないわよ。
そう言おうと顔を上げて、分かってしまった。のんが、寂しそうに笑ってたから。
……シンデレラの、し?
あたしが気付いたんだと分かったのか、のんは忍くんを見据えて想いを口にする。