「苺っ! 大丈夫なの!?」


校庭に集まるギャラリーに向かって歩いていると、あたしが探すより先にのんと燈磨が気付いて駆け寄ってきた。


「平気よ。傷は浅かったみたいだから」


立ち止まって言うと、ふたりはあたしの腕に巻かれた包帯を痛々しげに見つめる。


「ホントに大丈夫? 痛くない?」

「実は骨折れてましたとかナシだぞ」

「心配しすぎよ」


だいたいあの保健医、大袈裟に巻きすぎなのよ。


「「ならいいんだけど」」

「心配が短い!」

「心配してほしいのか、ほしくねぇのか、どっちなんだよお前は」

「やめふぇよ」


むつけたあたしの頬を、にやつきながら引っ張る燈磨を睨み上げると、のんが「やめなよ燈磨」と止めに入る。


そんなのんを見上げると、薄い唇が開いた。


「何か話せた? 忍くんと」


浮かれていた心に、流れ込むように溢れた罪悪感。


忍とのん、どちらを取るのかと問われたら、忍を取ると決めていたのに……。


目の前にするとどうしてこんなに難しいんだろう。どうして目を見て、言えないのかしら。


「とくに、何も……」


分かっていたのに、恐る恐る見上げたのんの表情は悲しかった。


寂しげに笑って「そっか」とだけ言うこの人は、あたしの嘘なんか簡単に見抜ける。


「次、忍くん出るよ」


あたしの手を取って、ギャラリーの中心に向かうのん。


この手を握り返せてあげられたら、どれだけいいだろう。