「いたーー! 忍っ!!」
突然ドアが勢い良く開いて、尋常じゃないくらい心臓が脈打つ。
「いつまで保健し……あ、もしや邪魔した?」
現れたのは湊磨くんで、あたしはバクバクと鳴る心臓に翻弄されて、言葉が出なかった。代わりに忍が立ち上がって、「別に」とあたしに背を向ける。
「苺大丈夫だったんだろ? 委員の奴らにはとりあえず奈々が笑顔で説教して…って違う! その話はまたあとっ! 忍お前出番だから! 集合掛かってっから!」
「ああ、もうそんな時間」
うるさい鼓動に顔を赤くしてると、大きな背中が振り向いた。意地悪い笑みを、浮かべながら。
「約束守れよ」
「早くしろ忍っ! 優勝すんだろーが!」
騒がしい湊磨くんと保健室を出て行った忍。
取り残されたあたしは、未だに収まらない鼓動と、火照る頬のせいで椅子から倒れ落ちた。くらくらと、目眩がしたから。
1番肝心なことを聞く前に、邪魔が入った。忍は意味ありげに口の端を上げて、1番肝心なことを言わずに去っていった。
これでドキドキするなと言う方が、無理に決まってる。
“約束守れよ”
「……っ」
カァッと、限界のない熱は体中を熱くする。
……シンデレラ。
あなたの王子様と違って、あたしの王子様はとんでもない性悪みたい。
小森 苺 15歳。
王子様に心の断片を告げられて、肝心な一言はないまま放置されました。
まだ決まってない。まだ分からない。でも、期待が現実になる予感。
落ち着かない気分のまま、体育祭後半、スタート。