何なのよ。忍のボケ。アホ。
突き放したいなら、最後まで貫きなさいよ。
あたしがひとりで帰るのかもって心配してるのがバレバレなのよ。
「忍のドアホ……ッ」
知ってるんだから。知り過ぎてるんだから。
不器用な、バレバレの優しさくらい。好きなんだから、気付くわよ。
優しくしないで。
期待させないで。
そう思うのに、どうしてかしら。
あたしはまた、見たいと思ってしまう。声を出さずに笑う、忍の笑顔を。
引きずるように動かしていた足を、昇降口を目の前にして止めた。
校庭に続く小さな階段で、のんと燈磨が笑って話している。その光景に、グッと息を止めてから靴を履き変えた。
「――のんっ!」
……シンデレラ。
大事なものがひとつじゃない時、貴女ならどうした?
どちらも大事に出来る選択を、方法を、見つける?
きっとあたしは、片方を傷つける方法しか見つけられない気がするの。
小森 苺 15歳。
会いに行くだけの予定が、ほぼ逆切れに近いバトルを挑んでしまいました。
勝負云々の前に、気付いてしまったことがひとつ。
あたしは、のんを失う覚悟をしなくちゃいけない。