「バカにしないでよ……」


想いが溢れて思わず好きだと口から出てしまうのは、忍が優しくするからじゃない。笑いかけてくれるからじゃない。


本当に、本当に、あたしにこれっぽちも望みがないなら、どこまでも冷たくすればいいのに。徹底的に無視すればいいのに。


リボンなんか返してこないで捨てちゃえば良かったのよ。今だって、関わるなと言うなら力づくでも追い出せばいいのよ。


それなのに、今更やめろなんて馬鹿なんじゃないの? 生徒会長のくせに、アホなんじゃないの?


何でもかんでも、自分の思い通りになると思ってるの?


分かってない。
あたしがどれほど、忍を好きか。



「いち……」

「ばらしてやる」


胸ぐらを掴んでいた手を離し、みっともないくらい涙を流して睨むと、忍は見開いていた瞳を怪訝そうに細めた。


「……はん?」

「忍の気持ち、透ちゃんに言ってやる」

「なん……っでお前はそうなるんだよ……」


額を押さえて椅子にもたれる忍は、呆れてるのか、困ってるのか、どっちかね。


忍の弱みを利用する。そうでもしなきゃ、あたしは忍の心に入り込むことさえ出来ない。


「バラされたくない?」

「当たり前じゃね?」


そうでしょ。そうよね? だったら……。