「少し前に戻りたい……」
枕に顔を埋めたまま呟くと、「じゃあそうしろ」なんて、無責任な言葉。
戻りたい。みんな、笑っていた頃に。
忍を追いかけて、のんと燈磨といて。忍は苦しいかもしれない。のんだって苦しいかもしれない。
それでもあたしは、前に戻りたい。忍の声が聞きたい、忍の笑顔が見たい。忍に抱き付きたい。
多くは望まないから、何でもいいから、あたしを好きじゃなくてもいいから、忍のそばにいたい。
「そうするには、どうすればいいの……?」
「知るか。俺は自分のやりてぇようにしか生きられないんで」
うん、俺様だものね。
「はぁ……」
ベッド寝転ぶと、真っ白な天井が眠気を誘った。
やりたいように、ね。
……少し、頑張ってみようか。悩んでる暇があるなら行動しろよって、ちぃ君は言いそうだから。
――シンデレラ。そういえばアナタは、いつも報われないのに決して何も諦めずに頑張っていたわね。
あたしにも、出来る? 何も失わずに済むように、諦めずに、頑張れる勇気があると思う?
小森 苺 15歳
王子様になってほしい忍と、王子様になることを望むのん。
どちらも失いたくない。そんなわがまま、通らないかもしれないけれど。
言ってみなきゃ始まらない。
言わなきゃきっと、伝わらない。