「苺、大丈夫?」

「眠さが限界だわ」


のんに抱えられたまま教室に向かう、はずだった。


降ろしてと言ったあたしを、のんは素直に降ろしてくれたんだけど、目眩に足がふらついた。


「じゃあ、ちゃんと寝るんだよ?」

「起きたらメールしろよ。迎えにくっから」


外出中で保健医のいない保健室に連れてかれて、ベットに横になるあたしにのんは布団を掛け、燈磨はいらないのに飴を置いてった。


カーテンが閉まるまであたしは笑みを作って、ふたりが出て行ったのを確認してから溜め息をつく。


「……気持ち悪い」


モヤモヤ、モヤモヤ。答えの出ない迷路に迷いこんで、ずっと抜け出せずにいた。


――ガラッと、突然ドアの開いた音にふたりが戻ってきたのかと思い、慌てて寝たふりをする。


「誰かいませんかぁ~?」

「……」


生徒かしら。でも何か、聞き覚えのある……。


「……チッ、誰もいねぇのかよ」

「…………」


何でイケメンがこの学校に!


勢い良く起き上がってカーテンを開けると、やっぱりそこにいたのはグレーアッシュの髪をしたイケメン。


「……苺じゃねぇか。何その髪色。いるなら返事しろよ」


いやいやいやいや。ちぃ君こそ何してるのよ!