「もう告白は済んだ?」
のん以外全員が、驚いてるに決まってる。
だっていきなり、透ちゃんの前で何を言い出すの!?
「し、忍……好きな人いたの!?」
ああほら。やっぱり透ちゃん気付いてないじゃない。見なさいよのん。忍、めっちゃ怒ってるじゃないの……。
「何のつもりだお前」
「聞いてみただけだよ」
ちょ、何でのんまで怒って……。
ハラハラして、あちこちに動いた視界の中で見えたのは、やっぱりどこまでも優しいのんの想いだった。
「……のん。もういいよ」
振り向いたのんはやっぱり怒っていて、泣きそうにも見えた。あたしは大聖先輩の手からリボンを取って、顔の横まで掲げる。
「もう、いらないから」
重さで垂直に地面へ落ちたリボンを見ずに微笑む。すると、のんが腕を伸ばしてきた。
抱き締められるのかと思ったら、そのまま引きずられるなんてどういうことかしら。
「のん、後ろ歩きはキツイわ」
首に回された腕を数回叩くと、体が持ち上げられた。その瞬間にのんの顔を見て、愛しさが込み上げる。
高くなった視界で忍を見ると、暫くあたしを見ていた瞳はすぐに逸らされた。
「……ありがとう、のん」
のんの頭に抱き付いて呟いたけど、返事は返ってこなかった。変わりに燈磨が頭を撫でてくれたけど。
……傷ついたりしないわ。リボンを、忍の手で返されなかったことくらい、なんてことないもの。
それぐらいのことで、傷ついたりしないわよ。
「あたしの為に怒ってくれてありがとう」
だから、のん。
あなたが泣きそうな顔、しないで。