「出よう苺」
「……」
「俺、忍くんの前じゃ苺に何するか分かんない」
「……なっ!」
カッと頬を染めると、のんはニコっと笑って立ち上がる。
慣れない、絶対慣れない。のんがそんなこと言うなんて、恥ずかしすぎる!
「何赤くなってんだよ苺。早く行くぞ」
「うるっさいわね!!」
赤くもなるわよ! なるに決まってるじゃない!
ケラケラ笑うのんを睨んで、少ししか食べられなかったオムライスを置いたまま食堂を出る。
「やべー。授業ダリー」
「次は出ようよ。燈磨勉強出来ないし、あんまりサボってると単位も落と……」
「………」
のんが言葉に詰まって、あたしは固まる。学食を出てすぐ、忍や透ちゃんたちと鉢合わせてしまったから。
「……今日は、昴たち委員会なの?」
「う、うん! そうなの!」
のんが笑みを見せると、透ちゃんはぎこちなく笑う。忍を、チラチラと見ながら。
……透ちゃんはこの前のこと、どんな風に解釈してるのかしら。
せいぜいあたしが忍に振られて、のんはあたしのことが好きで、透ちゃんはあたしを応援していたから、複雑ってくらいにしか思ってないんだろうけど。
まさか後ろで携帯を弄ってる忍に好かれてるなんて、予想すらしてないに決まってる。