「じゃあ各自種目はこれで決定! 今年は景品あるらしいから頑張れよー」


教室から担任の声が漏れる。クラスは近づく体育祭に盛り上がってるんだか盛り下がってるんだか分からない。


「あたし何になってる?」

「俺ら3人障害物競争みたいだよ」

「げ! マジかよ、最悪だな」


教室内ではなく外の光庭を目の前に座りこんでるあたし達。のんは窓に張り付いて、クラスの中をうかがってる。


「つーかのん、そんな近づいたらバレ……」

「あ!? 向井っ! お前らそんなとこにいたのか!!」

「「「うわ」」」


のんのバカ! 何見つかってるのよ! ていうか燈磨も言うの遅いわよ!


窓から身を乗り出す担任の顔が怒りでみるみる赤くなっていく。


「お前ら今日こそ説教……ってコラー!!」

「逃げろ逃げろっ」


燈磨の合図で立ち上がり、光庭を突っ切って向かい側の校舎へ逃げるあたし達。


割と自由な校風、さほど厳しくはない校則。入学してもうすぐ2ヵ月。あたし達はいつもこんな調子だ。


「はービックリした」

「のん、お前のせいだろ!」


忍に拒絶されて、のんに告白されてから1週間。あたしはまだ、忍に会いに行ってない。


「どーするよ。このまま食堂行く? 財布はあるし」

「んー……屋上のカギ鞄の中だしねぇ」


廊下を歩きながらふたりの会話を耳に入れて、窓から見える校舎を見上げた。


2階。そこに忍がいるのに、階段を登ればすぐ会えるのに、何でかとても遠くに感じる。


「苺、食堂行こ」

「うん」


のんの声に、忍のクラスから目を離す。気付いているんだろうけど、見上げたのんは笑っていた。