「もういつから好きだったのか、分かんない」そう言って笑うのんは、家族と同じくらいの時間を共有した人。


胸に込み上げる熱さに、目眩がしそう。


「でも、言えなかった。俺が苺の王子様になるには、一緒にいすぎて。……違うか。苺の性格を知ってたから、そうそう王子様が現れるわけないって軽視してたんだ」


きっとのんは、あたしよりも家族よりも、苺という人間を分かってる。


「もし現れても、直ぐ終わるだろうって。やっぱりあの人は王子様じゃないって言うんだと思ってた。だから、忍くんが現れても応援してたんだ」

「……」


応援なんて、のんだから出来ること。あたしだったら、嘘でもしたくない。


どれだけ望みが薄くて叶いそうになくても、自分の気持ちを押し殺して応援するなんて出来るわけがない。


だけど、のんだから。あたしと十年以上一緒にいた幼なじみだから、そうなってしまったんだと思う。


「忍くんが……透を好きなのも分かってたし、忍くんの性格は、苺と合わないって思ってた。なのに……苺が本気だって分かって、後悔したんだ」


絞り出すような声に、ジワリと涙が浮かぶ。


"苺は、ロマンチックな出逢いに憧れてたでしょ?"

"だって、関係ないでしょ?苺にとって、王子様に好きな人がいてもいなくても"


甘く見て、甘やかして。


"えーやだよ。俺、王子様がいい"

"もうやめればいいのに"


諭しながらも、優しくして。


あたしと過ごした時間のせいで、のんを無意識に応援してくれる人にさせてしまったのかもしれない。