「中学に入ってからね、俺は後悔することが多かった」
意味が分からなくて首を傾げると、のんは眉を下げて笑う。
「俺のせいで、苺は女子にさ……イジメられてたでしょ? 王子様のことも、あったけど」
……のんには、免疫があった。透ちゃんがいたから、王子様と騒ぐあたしを変だとは思わなかった。
同じクラスの爽やか君とか。モテる先輩だとか、コンビニの店員とか。王子様だと思っては、やっぱり違うってあたしは騒いでた。
他の子は、馬鹿じゃないのって。あたしは何が馬鹿なのか分からなくて、相容れないのならひとりでもいいと思っていた。
分かってくれるのんだけがいてくれれば、それでいいと思っていた。
「……聞き付けて駆け付けた時には、苺いっつもボロボロで。その度へこんだんだから」
「……反撃しただけじゃない」
シンデレラらしくはないけど。あたし、やられっぱなしって嫌なのよ。
「俺、幼馴染みなのに何やってるんだろうって。悔しかったんだよ?」
「……」
ああ、そうか。だからのんは、あの時怒ったのね。
「何回目かの時にさ。苺、3年生に呼び出されて怪我した時あったでしょ?」
そう、その時。突き飛ばされて、転んじゃって、膝擦り剥いたのよね。
「痛いくせに、我慢して強がって。俺、怒ったよね」
そうよ。それで、怖くて。我慢してたのに泣いちゃったのよ。いっつものほほんとしてるくせに、眉吊り上げて怒るんだもの。
「その時に、守らなくちゃって思った」
「……」
「もう傷つけたくないって思った」
青々とした空を背に、のんが紡ぐ言葉。
「好きなんだって、気付いんだよ」