「もう、やめだ」

「――っ忍!」


様子を見ていた大聖先輩が忍の肩を掴むも、忍は冷たくあたしを見たまま。


心が真っ二つに引き裂かれる思いだった。


「何言ってるのか分からないわ」

「分かるだろ。俺の気持ち知ってんなら」


その言葉に、大聖先輩も湊磨くんも、昴先輩も翔太先輩もキョウ先輩も、きっと驚いてる。


忍の膝に座ったことに、後悔した。こんな至近距離で、拒まれるなんて。


忍は、あたしが諦めると思ってたんじゃない。忍が、王子様になることを拒んだ。


……泣かないと決めた。諦めないと決めた。


グッと堪えて、無表情に近い忍を瞳にとらえる。


「知ってても好きだもの!!」


泣かない、泣かないわ。好きな気持ちしかないんだから、泣く必要なんてないもの。


だけど、忍の口から発せられた言葉はあたしの決心を簡単に崩してしまう。


絶望、そんな言葉じゃ言い表せない。



「俺は、好きじゃねぇ」



瞬間、目の前が真っ暗になって、体が宙に浮いた。



「じゃあ、俺が王子様になってもいいですよね?」