「……飯食ってんだから、膝に座んな」
顔を上げると、不審そうな表情。あたしは忍の膝に座ったまま首を傾げる。
「どうして? いつもしてたじゃない」
忍まであたしが諦めると思ってたの?
「苺、その髪小学生みてぇだな」
兄弟そろってハゲればいいのに。
湊磨くんを睨むと、「苺ちゃん?」と小さな声。振り向くと、そこにいたのは透ちゃんや昴先輩の5人組。
チクリと痛んだ胸は無視して、笑顔を向けた。
「おはよう」
「うん、おはよう……! ど、どうしたのその髪っ!」
ああ、やっぱり気付いてないのは透ちゃんだけなのね。
「ただのイメチェンよ」
昴先輩も、奈々先輩も。皆、あたしの髪が黒くなった本当の理由を分かってるみたい。
少しでも、透ちゃんの外見と離れたかっただけよ。なんて、言わないけど。
「降りろ苺」
低い声に忍を見ると、ギュウっと胸が締め付けられる。でも、負けない。
「いや」
そんなに透ちゃんに見られるのが嫌? あたしは、透ちゃんを意識する忍が嫌よ。
意地でも動こうとしないあたしに、呆れたように溜め息をつく忍。
両手をポケットに突っ込んで、あたしを見つめる奥二重の瞳が、なんだか怖い。