「……分かった。行こう燈磨」

「うぉい、のん~。マジでか?」

「マジでしょ。苺がそうしたいんだから」

「ね?」と微笑むのんに、キュンとする。

「のん! なんてイイ子なのーっ!」

「苺呪われろ」

「燈磨なんてハゲればいい。ハゲ男。ハゲ野郎」


のんの腕に手を添えて、ベーっと舌を出せば燈磨の血管プッツン。


「テメェこの! 誰がハゲだぁぁぁぁあ!!」

「逃げろー」


怒った燈磨にのんがそう言いながら走りだし、それに続く。


良かった。あたし、笑えてる。





「忍くん、は、どこ?」

「兄貴の赤い髪探せば一発じゃん」


生徒で賑わう学食に踏み込むと、のんと燈磨が辺りを見渡す。あたしは、すぐに見つけてしまうけど。


「あそこよ。ド真ん中の茶髪」


後ろ姿だけど、分かる。隣に座る大聖先輩の黒髪と前に座る湊磨くんの赤い髪が証拠。


「あ、苺っ」


のんに構わず、あたしは人の波を避けながら忍のもとに向かった。決心が揺るがないように、足早に。


あたしに気付いた湊磨くんが目に入ったけど、それどころじゃない。


湊磨くんが声でも発したのか、忍が振り向いた瞬間あたしは忍の目の前に着いた。


驚いた様子の忍に、躊躇いもなく抱き付く。