「俺は今の彼女に猛アタックしたぞ」
「ああ。隼人の彼女ってお嬢様学校に通ってるのよね」
「押したもん勝ち?」
得意げに笑うギャル男が、お嬢様と付き合ってる?
「……嘘だぁ」
「ほんとだっつーのぉぉお!」
世も末ね。きっと世間知らずなお嬢様だから、引っかかっちゃったのね。
「最終的に後悔しか残らねぇような恋なんか、恋じゃねぇ! 忍を好きになるのやめるなら、後悔残らない行動してからにしろよっ」
その言葉に、ムースに伸ばし掛けた手を止めた。
好きなのを、やめる・・・?
「やめないわよ!!」
ドンっとテーブルを叩いて、下唇を噛んだ。泣いてる暇なんて、きっとない。
「やめないわよ……! やめられるわけ、ないじゃない。好きなんだもの」
好きなの、大好きなの。手を繋ぎたい、微笑んでほしい。撫でてほしい。抱き締めて、キスをして欲しい。
あたしを、見て欲しい。あたし全部、なにもかも忍にあげたい。
「でも、どうすればいいかもう分かんない……」
「押しまくれば良くねぇ?」
「……ちぃくん」
かなり今更なチェイサーを持ってきて、悪戯に笑うのはちぃ君。
やっぱりあの可愛い性格は猫被っていたのかと思いながら、グラスを受け取る。