「……あ? 苺じゃん! どうしたんだよその髪っ」
学校に行く気がなかったからなのか。寝坊したあたしは夕方まで街をブラブラして、空いたお腹を満たすた為ひとりで-mia-に来ていた。
忍の先輩がいる、駅裏のパスタ専門店。
「……個室開いてっけど、使うか?」
黙ったままのあたしを気遣ったのか、隼人先輩はそう言って頷いたあたしを個室に促す。
「何だよ、どうした? もしや忍の好きな奴でも分かったとか?」
おしぼりを受け取る手が止まると、隼人先輩まで止まる。
「――え? まぁじで!? 当たり!?」
「……うるさいわね」
鼓膜破れるじゃないの。
「ふーん。で、その髪?」
あたしのミルクティー色の髪の毛は、真っ黒に変わった。
ここに来る前に、美容室に行って染めてきたのは、別に失恋したからとかじゃない。
「あたしは、透ちゃんの代わりじゃないもの」
自分で言っといて涙が出てくる。おかしい、昨日で涙は枯れたはずなのに。
「……皆が口を揃えて、忍はキツイんじゃないって言ってたのは、忍が透ちゃんのことを凄く好きだからでしょう? あたしを見る目が憐れんでたのは、あたしが透ちゃんに似ていたからでしょう?」
ポロポロと涙を流すと、大きな手が乱暴に黒くなった髪を乱す。
見上げると、15歳のあたしには大人を思わせる表情をしていた。