透ちゃんと、昴先輩。
あんなに互いを大事に想い合ってるカップルなんて、初めて見た。
見てるとうっとうしいけど、心の底で羨ましいって思う。憧れる。
誰も入る隙間なんてないって、あたしでさえ思う。きっと皆、忍本人も分かっているから、だから……。
“……お前もアレか。透と同じ部類”
違う、違う。あたしは、透ちゃんじゃないのに。忍は、昴先輩じゃないのに。
……なれないのよ。
どれだけ羨んだって、憧れたって。あたしはあたしで、忍は忍で。
“王子ねぇ……そんなになってほしいなら、振り向かせてみればいんじゃね?”
透ちゃんを忘れる為に、そう言ったんじゃないでしょう?
自分が誰かの王子様になれば、忘れられるかもなんて思ってるわけじゃないでしょう?
シンデレラ、シンデレラ。
お願いです。あたしの願いを叶えて。
小森 苺 15歳。
王子様のシンデレラは、あたしの十年来の幼馴染み、透ちゃんでした。
誰よりも可愛くて、人気者。性格の良さなんて昔から知ってる。
勝てるものなんてひとつもないと思ってるから、いつだって嫉妬していた。
願うのは、透ちゃんにひとつでも、勝るもの。