「苺っ!?」
昇降口を出ると、のんに呼び止められたけど足は止めなかった。
「苺!!」
「どうして!?」
やっぱり追いついてきたのんの腕を振り払って、涙でぐしゃぐしゃになった顔なんてお構いなしに叫ぶ。
「何でっ! ……あたしは……っ」
気付いた時には、のんの腕の中で。慣れ切ったこの行為は落ち着くけれど、涙を止めることは出来ない。
「っこんなに、好きなのに……」
あたしを抱き締める腕の力が強くなって、まるでのんが泣いてるみたいだった。
もっと早く気付けば良かった。
やっぱり気付きたくなかった。
聞かなかったことに、好きな人がいることすら知らなかったことにして、忍に猛アタックしたい。
でも、記憶がそれを許さない。大した期間じゃないのに、忍に出逢ってから毎日が忙しなくて、楽しくて、夢のようで。
記憶を遡れば溯るほど、忍への想いが見えてくる。忍の想いまで、見えてしまう。
「どうして透ちゃんなの……」
……自分から構いに行くタイプじゃねぇぞって言ってたくせに。
覚えてる、忘れてない。スケボーの彼だと知らなくて、忍と初めて会った時。忍は、透ちゃんに蹴りを入れて自分から話し掛けていた。
あたしが聞いた二者択一。忍の好きなタイプは、色白で、背が小さくて、ショートカットで、茶髪。まるっきり透ちゃん。
皆が忍の秘密を知ってるのに、それを忍に持ちださないのは、叶わないと分かっているから。