ガラッと保健室のドアが開く音が聞こえて、先生が戻ってきたのかと思ったら、聞こえた声は保険医の声ではなかった。
「お前らちょっと外してくんね?」
「……何しにきたの忍くん」
驚いてる内にふたりが立ち上がる音が聞こえて、顔を上げた時にはもうふたりの姿はなく、カーテンまで閉められていた。
忍のせいで泣いているのに、忍の姿が見れなくて残念がるあたしは、どこまでバカなのかしら。
「苺には会わせられませんよ」
「ごめんな忍くん。今日は、やめてもらっていい?」
のんと燈磨の言葉に忍は何も言わなくて、あたしは俯く。
薄い1枚のカーテンが、今のあたしと忍を別つ壁だ。現実は、きっともっと高くて厚い壁なんだろうけど。
「――ちょっと!」
のんの声と同時に、カーテンが乱暴に開く音に顔を上げる。
揺れるカーテンを背に、不機嫌そうに眉を寄せた忍があたしを見つめていた。
「ダメですって! 今日はホントにっ」
「いいよ……」
忍の肩を掴んだのんに言うと、燈磨が呆れたように溜め息をついた。申し訳なさから再び俯き、震える口を開く。
「のんと燈磨は帰って。……色々、ありがとう」
「「帰らないで待ってる」」
口を揃えて言うふたりに少し笑って、頷いた。
「校庭の前の階段な」
「終わったら電話してね」
ふたりの足音と、ドアの閉まる音を聞いてから顔を上げる。
涙はもう、止まった。