「ダメだよ苺」
後ろから、のんに口を塞がれる。その言葉と行動は、あたしの予想は当たっていたという答えにするには十分だった。
瞬間、我慢していた涙が流れる。
「秘密なんだから、本人の目の前で聞いちゃ可哀相でしょ」
突然のんに抱きかかえられても、あたしは抵抗せずに肩を借りて泣いた。
のんの後ろにいた燈磨が、頭を一撫でしてきたけど顔を上げることはなかった。
「気にしないで。最近苺、情緒不安定なの」
「え!? 大丈夫!?」
「……じゃあ、様子は見に行かない方が賢明ね」
「ま、そうしてくれると助かるんでっ!」
燈磨が言って、のんが歩きだしても、忍からの言葉がないことに余計涙が出てくる。
背中を撫でる幼馴染みの手が、どうしようもないほど優しくて。保健室に着いても、あたしは泣きっぱなしだった。
「頬より目が腫れちゃうよ?」
ベットに腰掛けるあたしの足元に、心配そうな顔をしたのんと燈磨がしゃがみ込んでいた。
あたしは止まらない涙を隠すように両手で顔を覆う。
「こんなのって、ない……っ」
「苺……」
こんなのあり得ない、ヒドイ、最悪。ほんとに、最悪……。
叩かれた頬はまだ少し痛むのに、熱はもってない気がした。忍に触れられて離れた時、あたしの体温は一気に下がった。
忍の好きな人が、予想出来たから。それはのんによって、正解だと分かってしまったけど。