「あーあ。赤くなってんぞ。少しは学習しろよ」


乱暴にあたしの頬を撫でる燈磨に、ムッとして手を払い除ける。


「売られた喧嘩を買っただけよ!」

「買わないで」


言い返そうとした燈磨の動きを止めたのは、のん。見ると、少し怒っていた。


「買わないでって、何回言ったら分かるの」

「あ、あたしの勝手じゃない!」


怒るのんなんて、久しぶりに見たから動揺してしまった。というより、2度目。


マイペースなのんが怒るなんて、そりゃもうツチノコレベル。


「ダメだよ苺。……俺と燈磨は、苺を守るためにいるんだから」

「あたしが一緒にいてあげてるのよ!」


のんがあんまり正直に言うもんだから、あたしは染まる頬を誤魔化すように声を張り上げた。


そんなこしたって、十年来の幼馴染みにはバレてしまうんだけど。


「ぷっ、怒られて戸惑って照れてやんの」


なんっでアンタにもバレてんのよ!!


「黙りなさいよこのお子ちゃま! 飴好き!」

「飴をバカにすんじゃねぇー!」


燈磨の怒鳴り声と共に、微かな音が耳に入る。


あの、地面が擦られる独特な音。反射的に体育館の角に目をやると、そこから勢い良く忍が現れた。


両足をスケボーに乗せたまま、風を切って曲がってきた姿は、どう見たって格好良すぎる。


ザっと地面に片足を降ろして、あたしの目の前で止まった忍。見つめてくる瞳に、ドキドキして胸も息も苦しい。


伸びてきた手に、あたしの体温は急上昇。