「ナメないでちょうだい」
こんな場面、あたしは何回も何回も、遭ってきたのよ。
誰のせいってそんなの、無駄にモテるアホふたりのせいに決まってるじゃない。ほんと無駄よ、無駄。
「「苺!!」」
ああ、ほら。来ちゃったじゃない。だから5分しか割けないって……言ってないけど。
横を見ると、こちらに走ってくる無駄にキラキラしたのんと燈磨。先輩たちがヤバイと口々に囁いたって、もう遅い。
のんがあたしの元へ辿り着いたと同時に、燈磨が先輩達に食い掛かる。
「苺に何してんだよババァ共!」
ババァって、最低ね燈磨。ひとつしか違わないじゃないの。
「苺っ! 大丈夫?」
のんが息を切らしながら、顔を覗いてくる。
「大丈夫じゃないわよ。見てよコレ。腫れたらのんと燈磨のせいだからね」
「ごめん……」
真面目な顔して謝るのんに、溜め息をつく。
「冗談よ。慣れてるし、反撃したもの」
「あーあ……苺、お前力いっぱい叩いただろ」
「全力に決まってるじゃない」
燈磨の哀れむ表情に何を期待したのか、先輩達の顔が緩んだ。けれどそれは一瞬。
「先輩方全員、透と兄貴と忍くんにシメられること決定だから。俺らが止めたって、もう無理だから。覚悟しとけよ」
指名手配犯みたいな笑顔を見せた燈磨に先輩たちは震え上がって、「ごめんなさいぃぃぃい!」と、一目散に逃げていった。