「何がおかしいんだよっ」
ドンッと肩を押されて、よろけた体をなんとか足で支える。
コンクリートの地面で転ぶなんて、冗談じゃないわ。
言葉の代わりに、4人を睨み上げた。
「くだらないと思っただけよ」
あたしのことが気に入らないんだか何だか知らないけど、くだらないわ。
王子様王子様とうるさいあたしをバカにしたいのなら、気の済むまでバカにすればいいのよ。
「忍に纏わりつくあたしがウザイ? のんと燈磨と常に一緒にいるのもウザイ? あなた達は何がしたいの?」
冷めた笑みを見せると、4人の先輩達は黙る。
「自分が相手にされないからって、あたしに当たらないでくれる? あなた達こそ、頭おかしいんじゃないの? そんな暇あるなら、1秒でも長く鏡を見てなさいよ」
髪が痛んでる。肌が荒れてる。メイクが顔に合ってない。個性がない。僻む暇があるなら、自分の研究でもすればいいのに。
「あたしは本気なの。本気で忍に王子様になってほしいの」
トン、と目の前にいる先輩の胸に人差し指をつきつける。
「あなた達みたいなミーハー心じゃなくてね?」
先輩の顔が赤くなったのに気付いたけど、あたしは避けなかった。右側に飛んできた、平手打ちを。
バチン!と乾いた音と頬に広がる痛みには、慣れていた。
「調子のんなよ!」
その言葉も、何度聞いたかしら。ジンジンと痛む頬に触れて、何とも思ってない自分に笑えてくる。
笑ってしまう前に、あたしは自分の右手を振り上げた。もちろん、先輩に平手打ちを返すために。