「あたしの可愛い可愛い苺ちゃんに何さらしたんじゃこのドアホーっ!!」

「………」


次の日の休み時間。忍のクラスに赴くと、透ちゃんが忍に飛び蹴りをくらわせてる最中だった。


もっとやれ!と思ったのは一瞬で、やっぱり許せない気持ちの方が大きかったあたし。


「あたしの王子様に何してくれてんのよこのドチビ!」

「っえー!って苺ちゃん!」


吹っ飛んだ忍に駆け寄って、あたしは透ちゃんを睨み上げる。すると奈々先輩が溜め息をついて、驚いている透ちゃんの腕を引き寄せた。


「だから言ったじゃないの、バカね。忍は何もしてないわよ」

「だって奈々! 昨日明らかに苺ちゃんの様子が変だったもん!」

「変じゃないわよっ!」


間髪入れずに声を張り上げたあたしを、透ちゃんや忍を含む大勢の人が見てくる。


忍が何かしたとか、あたしの様子がおかしかったとか、そんなこと言うのはやめて。


「変じゃ、ないわよ」


忍に、バレたと思われたくない。秘密を知ってしまったんだと、気付かれたくない。


「変じゃね?」

えー!!


床に座ったままの忍が、隣にいるあたしを見つめてくる。


あたしではない誰かを、愛しく見つめているだろう瞳で……。


「っ変じゃないってば!」

「昨日おかしかったじゃん」

「どのあたりがよ!」

「全部じゃね?」


ぜ……っ! 全部って! 細かく分けなさいよ! 全部なんて言われちゃ否定するところがないじゃない!!


押し黙ったあたしの体に、一体何人分の視線が集まっているのかしら。


ああ、ダメよ苺。黙ってちゃ、認めることになる。何か……何か言わないとっ。