「最初から知ってるのと、今更知るのじゃ大違いなのよ!!」
食い付くように叫ぶあたしに、のんも燈磨も眉を下げた。何も言い返せない。そんな感じのふたりに、余計涙が溢れる。
いつもおちゃらけて、あたしをからかうふたりが申し訳なさそうにしてるということは、そういうことだ。
夢じゃない。勘違いじゃない。妄想でもない。
コレは、忍に好きな人がいるのは、現実なのね。
のんが言うように、諦めるつもりなんてない。忍に好きな人がいたって、忍を好きなのは変わらない。
でも、悲しい。どうしようもなく、悲しいのよ。
「ごめんね苺」
「悪かったよ」
今更謝ったって許さないわ。
「……奢ってよ」
結局許してしまう方向に切り替わるあたしの頭。ムスッとして呟くと、のんは眉を下げたまま笑う。
「そのつもり」
「奢ってやるから、いい加減ブサイクな面すんなよ」
「誰がブサイクよ!!」
人が許してあげようってのに! ブサイク!? 燈磨の方がよっぽどっ、……ないわね。
どこ見たってブサイクって言葉が当てはまる部位がないわこのイケメン。ほんと、憎ったらしい。
「はぁ、泣きつかれたわ」
「そうそう。泣いてる暇あんなら忍くんに時間使えよ」
「燈磨、たまにはいいこと言うじゃない」
「当たって砕けろだよ苺っ」
「砕けてどうするのよこのくるくるパーマがぁぁぁぁあ!!」
騒がしいあたし達はこの後店員に怒られたのは言うまでもなく。強制退店させられて、帰ることにした。